いわての新鮮力 平泉町 和牛生産 千葉太一さんJAいわて南青年部の委員長、千葉太一さん

 肉牛の産地として知られる岩手県内では、特に和牛生産がさかんなのが県南地域。「いわて前沢牛」はじめ「いわて南牛」など数々のブランド牛を生産、全国からも高い評価を受けている。その「いわて南牛」の素牛である「磐井牛」を飼育している千葉太一さんは、平泉町で12代続く農家に生まれ、子どもの頃から牛が身近にいるのがあたりまえの暮らしを過ごしてきた。就農14年目となった現在は、和牛繁殖と米を主軸に、祖母や両親とともに作業に従事。またJAいわて南青年部の委員長として、さまざまな活動にも参加している。


訪問時には親牛13頭と出荷を控えた子牛が畜舎に


餌やり。息子の勇太朗くんも覗きに来た


原発事故で、この地域で生産された粗飼料を給与できないため、輸入粗飼料を使用している

 そんな千葉さんではあるが、実は高校生になった時点で家業への関心はゼロ。父に勧められた農業大学校への進学も断り、しばらくは別の仕事に従事し、農業は親の“手伝い”感覚で取り組んでいたという。だが家畜市場に出入りするようになって、気持ちの変化が訪れた。「いろいろな生産者と出会い仲間も出来たことで、初めて“ものづくり”への関心が芽生えたんです」。和牛の生産も、最終的には買い手が喜ぶ『もの』を作る仕事に違いない。餌や環境・血統など、さまざまな工夫が売価という結果に現れる家畜市場で、千葉さんは畜産という仕事の面白味と醍醐味を感じ始めた。その後は生産の講習会や研修会などに積極的に参加し、和牛繁殖でやっていこうと気持ちも定まったという。


親牛の乳を飲むことで体内に免疫が出来る


生後2ヶ月の子牛。離乳は4~5ヶ月後


父親の働く姿を間近に眺めて息子は育つ

 技と経験、創意工夫はもちろんのこと、作り手の考え方や信念でも出来映えが変わるのがものづくり。和牛生産とてそれは同じで、千葉さんは「特に子牛の時期が重要だから」と、離乳まで親牛と一緒に過ごさせる自然分娩・自然哺育の方法を取り入れている。「両親や他の生産者の話を聞いたりしていいものは吸収している。でもやっぱり、自分なりのやり方は崩したくない」。繁殖農家の手を離れた牛の『結果』が出るのは2年後。時間がかかるからこそ、作り手としてブレない姿勢が必要なのかもしれない。

 委員長をつとめるJAいわて南青年部の盟友は200人を軽く越えているが、本部活動に関わるメンバーは一部に限られている。「先輩ばかりでなく、農業に熱心に取り組んでいる同年代や後輩も取り込んで、組織をもっと盛り上げて行きたい」そう考える千葉さんは盟友が交流する機会づくりにアイデアを凝らし、青年部として地元の平泉小学校の児童に米づくりを体験させる食育事業「学童農園」にも取り組んでいる。その一方で、和牛組合内に5年ほど前に設立された和牛青年部の仲間とは地域農業について話し合いを重ねてもいる。農政やTPP問題、そして放射能汚染のこと…考えねばならないテーマは山積みだ。


「ほら見て!」息子の勇太朗くんが空を指差す


5月の空に、健やかな成長を願う「鯉のぼり」


実姉や近所の子どもたちと一緒に。地域が家族

 そんな千葉さんも、息子の勇太朗くんの前ではやさしい父の顔になる。現在、勇太朗くんは4歳。小学校に入学すれば、千葉さんとともに「学童農園」で米づくりを体験することになる。実は千葉さん自身も小学生の頃、この学童農園での米づくりを体験しているという。

 先輩から後輩へ、父から子へ。「こうやって自然と繋がっていくんですよ」と千葉さんはいう。人と人との確かな繋がりが、地域農業の明日を拓いていく。

(取材日/平成24年4月22日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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