いわての新鮮力 奥州市江刺区 野菜栽培 及川徹さんJA江刺青年部の及川徹さん


フィリピンから来た4人の実習生。5年前から受け入れている


約4000玉を管理しているシイタケのハウス


収穫は朝5時と夕方16時から。選果済みのキュウリ

 奥州市江刺区の東、山あいに開けた耕作地の多くは田で占められる飛沢集落。この地で両親とともに農業を営む及川徹さんは、今期はシイタケを、来期からはキュウリの生産を独立して行うことになった。就農して5年目、市の青年就農給付金を利用しての本格始動だ。

 「今後5年分の事業計画書を作り、妻との共同経営という形にもしました。給付金は攻めるための軍資金。何かを始めるなら、やはりリスクをとっていかないとダメだと思う」。

 小さい頃の憧れは、スーツ姿のサラリーマン。「農業はずっと嫌だった」と笑う及川さんだが、23歳で江刺に戻り父の元で農業を学び始めた。就農2年目から手がけ始めたキュウリは現在、ハウスが7アール、露地15アール。春の定植に始まって、7月にはハウスキュウリが収穫ピークを迎え、露地キュウリは7月中旬から10月いっぱい収穫作業が続く。一方の菌床シイタケは2年前に導入し、ハウスの規模は2アール。こちらも4月下旬にブロックをハウスに入れ、秋の発芽に向けて温度や水分などの細やかな管理を行っている。平成20年から受け入れている海外からの技能実習生も4人いるが、及川さんのやるべきことは多い。


仕事の合間には読書。読むのは600頁を越えるビジネス書


高温と過乾燥。病気にも悩まされたキュウリ畑にて


摘果に注力、A品を増やすよう努力してきた

 だが日々の仕事をこなしながら、及川さんは積極的に外にも出て行く。北上市の岩手県農業研究センターで行われている「いわて青年農業者企業家塾」では、10人の塾生とともに各地の先進経営事例を学び、事業計画書の作成や経営戦略を練り上げた。「取り組んだのは、各地の成功事例を自分の経営に落とし込むという作業。作物自体の見直しや今後の方向性など、自分自身の経営ビジョンをはっきりさせることが出来ました」。そんな行動の合間には思索と、手にする本は分厚いビジネス書や自己啓発関係書。「自分だったらどうできるかと思いながら読むことで、まずは動くことが大事だと気づいた」と話す。

 20代での就農そして独立。及川さんの選択に、「すごいな」「えらいね」という反応をする人も多い。「そういう人は農業を『職業』として見ていない。だから自分は規模を拡大し、収益をどんどん上げていきたい。自分の作る農産物のブランド化を図り、最終的には法人化する。農業者ではなく経営者になりたいんです」。及川さんが目指す道は、はっきりしている。


学生時代にはバンド活動も。現在は敷地内にスタジオを確保


愛犬サクラとのスキンシップの時間も大切に

 記録的な猛暑が続いた今夏、手がけるキュウリは高温と過乾燥により収量が大幅に減少した。「定植期の低温と梅雨で生育が悪かったところに、お盆明けは一転して高温期になった。その上、べと病や褐斑病までも出て、昔からの品種はほぼ壊滅状態。試験栽培していた耐病性の強い新品種だけが残った感じです」。淡々と状況を分析するが、これも農業をやる上でのリスクと及川さんは受け止めている。それを理解した上で、少しでもいいものを出すために摘果など日々の栽培管理を着実に積み重ねていくだけだ。

 「今まで考えてきたことが、これからは全部現実になる。そこに直面しながらも、一歩ずつ前進していけるかどうかだと思います」。及川さんの言葉からは農業にかける覚悟と、それ以上に新しい農業経営への期待がにじんでるように感じられた。

(取材日/平成24年9月12日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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