いわての新鮮力 久慈市 ほうれんそう栽培 桑田正勝さん若手ほうれんそう生産者、桑田正勝さん


「寒締めは時間がかかるが単価はいい」と桑田さん


前日に降った雪に覆われたビニールハウス


ほうれんそうは作業場へ持ち込み、根を切っていく

 今年の冬は厳しく、沿岸部の久慈市ですら何度も雪に見舞われた。「あとは毎年3月末に大雪が降る。昨年はそれで種まきが遅れたが、今年はどうなるかな…」。雪に覆われたビニールハウスの中で、桑田正勝さんがつぶやく。足元に青々と葉を広げるのは、今期最後の収穫を迎えた寒締めほうれんそう。ここにも間もなく、雨よけほうれんそうの種が蒔かれる。「種まきを早くすれば早く収穫できる。ハウスの回転を早くするのが目標だから」。

 久慈市をはじめとする県北地域は、ほうれんそうの主力産地。桑田さんも、母親が長らく手がけてきたほうれんそう栽培を受け継いで今年で丸4年目になる。以前は建設関係に勤めていたが、じっくりと腰をすえてできる農業の可能性を信じて就農を決めた。

 手がけるハウスは現在18棟。「多くはない分きちんと管理できるのがいい」と桑田さんはいう。しかし春、雨よけほうれんそうが始まると収穫作業は朝そして夕方から深夜の2回になり、合間には毎日の種まき作業が待っている。そしてこの作業は、10月の寒締めほうれんそうの種まきまで続くのだ。「9月5日に蒔いた種が1ヶ月後に収穫できても、翌日の6日に蒔いた種が1ヶ月で収穫できるとは限らない。1年を通じて出荷を続けられるよう、色々工夫している」と桑田さん。他産地との競合で単価が伸び悩む中、回転率アップは急務なのだ。


規格に合わせ、ほうれんそうをまとめていく


脇葉は折れやすいのであらかじめ取ってしまう


葉が広がった寒締ほうれんそうは袋詰めにひと工夫

 収量とコストを追い求める一方で、桑田さんには生産者としての誇りがある。ほうれんそうにも他の野菜同様に連作障害があり、放っておけば萎凋病(いちょうびょう)などで全滅の危険すらある。対抗策としては薬剤などによる土壌消毒があり、ここ数年で有効性を示す実証結果も得られている。しかし桑田さんはこの消毒剤を使っていない。「土壌消毒は土のリセットで、これまで堆肥や微生物を使って作ってきたいい成分まで殺してしまう。今はいいけど10年先20年先を見たとき、続けられていられるかどうかわからなくなる」。

 収穫が終わったあとは出荷準備。袋詰めは自宅横の作業場で、一つひとつ手作業だ。雨よけほうれんそうの出荷規格は一般的には170グラムだが、JA新いわてでは180グラム以上が基準。桑田さんは185グラムを目安に、調整機で根を切ったほうれんそうを詰めていく。「ものによって折れやすかったり、しなりやすかったりもあるけど下葉はできるだけ落とす。包装機もあるけど、手作業でも早さはそんなに変わらないから使っていない」。ていねいに、かつ無駄のない手さばきで袋詰めが出来ていく。


寒締ほうれんそうの規格は200グラム


栽培はローテーション。ハウスの管理に歩く


1月に蒔いたほうれんそう。4月に出荷される

 2年前からは、久慈地域内の若手生産者で結成されたグループ「green buds」に参加し、情報交換も行っている。ほうれんそう栽培者もいるが、りんごや米、菌床しいたけと生産品目はバラバラ。「それでも、これからの経営の仕方を話し合えるのは大きい」と桑田さん。若手同士、農業への意欲や思いに共通する部分は多いだろう。まずは自分なりの生産体制の確立そしてその先の規模拡大に向けてと、桑田さんも将来ビジョンを描いている。

 就農時、母は「やる気があれば収入もとれる仕事だ」と桑田さんの決意を後押ししてくれた。それから4年、天候に左右され失敗ももちろん重ねて来た。しかし努力した分の収入を得られる農業という仕事に、桑田さんは大きな魅力を感じている。

(材日/平成25年2月14日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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