いわての新鮮力 北上市 りんご栽培 菊池修二さん米農家の5代目として就農して11年。菊池修二さん


晩生はシナノゴールドと王林の2種類を栽培


赤く色づいたフジ。収穫期が品質に大きく影響する


中手種のジョナゴールド。甘さと酸味を持ち合わせる

 夏油三山を西にのぞむ北上市江釣子地域。田畑を見下ろす丘陵地に、わい化りんごの圃場が広がっていた。「ここは夏油からの風は強いけど、水はけがいいからりんご栽培に向いている。最初の5反歩から少しずつ増やし、今は1町歩ぐらいになったね」。代々の米農家に生まれた菊池修二さんは今、就農時に父から任されたりんご栽培に取り組んでいる。
 米どころ江釣子に「江釣子わい化りんご生産組合」が出来たのは、今から30年以上前。米の生産調整をきっかけに地域ぐるみで複合経営の発展を目指し、現在は30軒ほどの農家でりんご団地が形成されている。米が主体ゆえ1戸あたりのりんご栽培面積は3~5反歩とけっして多くはないが、組合員全員がエコファーマーに認定されるなど先進的な活動事例も多い。この組合の立ち上げに関わった父や祖父の姿を見てきた菊池さん、高校卒業後しばらくは会社勤めを経験したが、結婚を機に農業への専念を決めたという。「父が米をやって自分がりんごをやる分担。そして(栽培面積を)増やした分は、全部自分でやれと言われました」。品種は、栽培計画はどうするか等々、最初は文字通りの手探り状態だったという。(※1反=およそ31m×31m)


フジは贈答用も多い。箱詰めは母や妻が手伝ってくれる


夏の暑さで変質した葉。今年は台風被害もあった


愛娘の澪ちゃんと。摘果も手伝うようになった

 菊池さんが作る主要品種は、早生種から順に、きおう・黄香・早生ふじ・紅いわて・ジョナゴールド・シナノゴールド・王林・フジなど。黄色品種が多いのは、赤肉と比べ葉摘みや玉回しなどが少ないという栽培メリットがあるからだ。さらに「これからは早生と晩生にシフトするか、稲刈りと重なるジョナゴールドの代わりに紅いわてに切り替えるか、色々考えている」と菊池さん。作業の効率化はもちろん、売れるりんごの見極めも重要だ。「今の時代はより甘いりんごが好まれるから、甘さと酸味のバランスがいい紅いわては有望だと思う」と話す。
 就農して11年目、「りんごは『木』を作るものというのがわかった」と菊池さんはいう。
 「枝が多いと色づきが悪くなり、切り過ぎれば今度は木のバランスが崩れる。樹勢をよくする枝の切り方と樹勢を抑えるための切り方があって、要はバランスを見ながら切っていくんだけど、木は1本1本違うから『これだ』というやり方はないね」。どの枝を切ったかは、その木の寿命が終わるまでついてまわる。いくら経験を重ねても、最初のハサミを入れる時は緊張するのである。それでも、父をはじめ組合員などの“先輩”が周囲に数多くいるのは「家族的な繋がりの強い地域のお陰」と菊池さんはいう。組合内には防除班があり、月に2回の共同防除作業がある。作業的な支えあいに加え、共同防除のため農薬使用量が抑えられるのは安心安全の面からも大きい。品質のいいりんご作りに、地域の協力は欠かせないのだ。


澪ちゃんにとって圃場は遊び場のようなもの


自慢のりんご。10月にはJAとして市内小学校へ無償提供


JAいわて花巻青年部、北上地域の委員長も務める

 晩秋11月の圃場では、晩生種フジの収穫がそろそろ始まるというところ。収穫は霜の降り具合や冷え込みの強さを見極めながら12月初旬まで行われる。年明け間もなくからは剪定が始まり、それが終わると米作りの季節がやってくる。「休めるのは盆と正月くらい。キツイと思うこともあるけど、時間を自分で調整できるのは農業だけだから」。繁忙期の農作業を手伝ってくれる家族、そして共同作業で支えあう生産組合。家族や仲間の支えの中で農の営みは続けられ、農の結びつきが地域づくりや活性化に大きく貢献をしている。

(取材日/平成25年11月5日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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