いわての新鮮力 盛岡市玉山区 米栽培 山本藤幸さん山本藤幸さん。JA新いわて青年部玉山支部長と玉山区農村青年クラブ会長を兼任する


ハウスは全5棟。規模拡大に合わせてこちらも増やしてきた


今年度の純農Boyのカラーはブルー。背中に堂々「農」の文字で岩手の農業をPR


星やハート形に入れて栽培。キュウリに付加価値を付ける工夫

 「この地域に根ざした農業をやっていくのが目標。まだ始めたばかりだけど頑張っていい道筋をつけて、農業をやる人も生産量も増えていけばいいと思っています」。
 間もなく完成するビニールハウスの前、スカイブルーのつなぎも清々しく山本藤幸さんが笑う。傍らに立つ妻の早苗さんは、仕事の上でもかけがえのないパートナー。昨年から始めた米の直接販売でもふたりで店頭に立ち、農業の魅力を消費者へ直接語りかけてきた。
 4代目「2014年いわて純農BOY」である山本さんは、盛岡市玉山区で米とキュウリを作っている。大学卒業後に就農して9年目、10haだった米の面積も今は20haに増えた。「長く米を作ってきた父に任せたいという人が多く、田が集まってきた感じです」と山本さん。和牛繁殖農家が多い玉山区では、自家用と粗飼料のために米を作るケースが多い。米を主力に野菜の栽培を手がける山本家のような経営スタイルは、地域ではまだ珍しいのだという。


自慢のあきたこまち。直販用には買いやすい小袋も用意した


玉山地区で昔から作られて来た「黒平豆」。地元では煮物が定番


昨年取り組んだ初の作付分は全量、買い取り先がついた

 そんな山本さんには、多くの“師”がいる。支部長をつとめるJA青年部では同じ玉山区で農業法人を営む高橋志洋さんはじめとした先輩たちから、そして会長をつとめる玉山区農村青年クラブでは、ゼロから野菜づくりをはじめた新規就農の仲間たちからも多くのことを学んでいるという。技術や知識はいうまでもないが、この先の農業を見つめる先輩たちの取り組みや新規就農者の持つ情熱に、同じ農業者としていい刺激を受けている。「青年部は親世代から引き継ぐ畜産農家が多く、青年クラブは野菜農家や新規就農者の比率が高いという傾向がある。個性の違うそれぞれの組織を交流させられたら、と思っていて」。地域活性化のきっかけとしても、若手農業者の交流は有効なアイデアだろう。
 米の直接販売では、消費者との交流を体験した。「首都圏のマルシェに立って、岩手にはうまい米があると訴えてきました。生の声が聞けるのはもちろんだけど、自分がどうやって米を作っているか伝えながら売ることは、とても大切なんだと気付きましたね」。任命された純農BOYでも、この「伝える」ことを重視していくのが山本さんの考えだ。「我々農家が真剣に、きちんとしたいいものを作っていることをアピールすべき。いわて純情娘だけじゃなく、もっとあちこちに(純農BOYも)呼んで欲しいなあ」。笑いながら、でも山本さんの思いは真剣だ。


東京で行われた販売会。夫婦で店に立ち、岩手の米をPRした


育った環境がまったく違うふたり。だからこそ刺激し合える


農業の情報発信にも取り組む、山本藤幸さん、早苗さん夫婦

 春。米とキュウリの栽培はすでに始まっている。4月初旬には苗代づくりがあり、下旬からはもうキュウリの定植だ。「キュウリはロスも多く、栽培は野菜の中でもかなり作業がきつい作物。だからといって単純に量を増やすのではなく、ハウスの利用も含めて長期間出せる工夫をしていく。そしていずれはエコファーマーの認可も取りたいですね」。米でも、今年から主力のあきたこまちに加え新品種の試験栽培に取り組み、さらに在来種「黒平豆」の栽培も始めている。手間がかかるため作付け面積が減っている黒平豆の研究グループを立ち上げたのは妻の早苗さん。「作っている人の知恵を借りて、若い人も取り込んでいきたい」と奮闘中である。
 「結婚したことで、農業への意識がかわった」山本さんは振り返る。それまでは、両親に言われた仕事をこなすだけの作業員だった。しかし今は暮らしの糧として、収量や収益を上げることを真剣に考えている。そんな山本さんに、非農家から嫁いだ早苗さんからは時に厳しい『ダメ出し』があるという。「農家の信じる常識は、ある意味非常識だというのを(早苗さんから)教わった。だからケンカはするけど、結局、間違ったことは言われていないんですよね」。黒平豆しかり、新しいことへの挑戦も心強いパートナーがいるからこそできるのだ。そんなふたりの周りには少しずつではあるが確実に、若い農業者たちの輪が生まれはじめている。

(取材日/平成26年3月28日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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