いわての新鮮力 花巻市 稲作・畜産 川村茂樹さんJAいわて花巻青年部副委員長、川村茂樹さん


機械には強い。精米機械のメンテナンスも自分で行う


26年度産、新米のひとめぼれが積まれた倉庫


11頭の親牛を飼育。作業は川村さんの母も行っている

母屋の横にある大きな倉庫。開けるとそこには玄米タンク、籾摺り機にライスグレーダー等々、一通りの精米設備が揃っていた。「規模はそんな大きくないけど、花巻でもフレコン出荷設備などが自宅にあるのはまだ珍しいでしょうね」。そう言って、川村茂樹さんが精白米機を動かしてくれた。ゴウンゴウンと音を立て、はきだし口から精米したてのひとめぼれがあふれ出す。手塩にかけたこの自慢の米すらも、平成26年の米価大幅下落では打撃を受けた。「自分もきついけど、まわりの農家がどんどんやる気を失っていく中、やれることを考えなくては…」。JAいわて花巻青年部副委員長であり、花巻地域の委員長も務める川村さん。地域農業の若き担い手は、厳しさを増す環境に油断をせず臆することもなく、しっかりと前を見据えている。


畜舎は祖父の代に建てたものを改装しながら使っている


粗飼料の質は重要。はせがけの稲藁を与えている


天井が高いのは豚舎の特徴のひとつでもある

 稲作中心の花巻地域で、米と畜産を手がけてきた川村家。以前は養豚も行っていたが4年ほど前に和牛繁殖に集約、現在は約10ヘクタールの水田と親牛・子牛合わせ約20頭を飼育する。「小さい頃、秋から冬にかけては肥料を配達する両親を手伝っていた。そのお陰で地域の農家のことをよく知ることが出来たと思う」と川村さん。長男として家業を継ぐのは当然と、農業大学では畜産を学び就農した。今は牛の世話もしながらも仕事の中心は稲作で、昨年は近隣の水田2ヘクタールの作業も引き受け、田かきから稲刈りまで行った。
 川村さんの暮らす地域は粘土質で、田は水持ちはいいもののぬかり易く大型の農業機械は適さないという。そのためほ場の広さは最大でも1ヘクタールで、基本はせいぜい30アール程度。「だけど粘土質の田はうまい米が穫れるし、収量も10アールで9俵以上はいく」と川村さんは胸を張る。そんな米づくりの歴史を守るための方法として、川村さんが描くのが法人化だ。昨年は岩手県の地域農業マスタープラン実践事業の採択を受け、湯本地区の農家仲間と「湯本草地利用組合」を結成、今年から稼働する。「小型ロールベーラーなので、まずは我が家の粗飼料の確保を確実にしたいが、これ(草地組合)を法人化すれば他所からの粗飼料へのニーズにも応えることができるし、田の作業受託も拡大していくことができると思う」。川村さんはそう考えている。


養豚時代の堆肥舎を利用。米づくりに使われる


湯本草地組合で導入したロールベーラー


長男の昴龍くん、次男の夢蔵くんと

 米づくりと同様、畜産でも川村さんには目標がある。平成29年に宮城県で開催される全国共進会に自分の牛を出すことだ。「3年前の長崎での共進会では県全体でも20頭もいなかった中、花巻からは5頭の牛を出すことが出来た。出せるのは雌であれば2歳ぐらいだから、いいタイミングで生まれてくれればチャンスはあるかもしれない」。ちなみに花巻の牛(黒毛和種)は発育よく肉量も多く繁殖能力も高い「気高系」が多く、前沢牛のようにサシが入りやすい「田尻系」とは違うという。とはいえ近年はかけあわせが進み純血種は少なくなってきている。「肥育農家からは(気高系は)サシが入らないと言われるけど、今は改良だって進んでいる。ただ雌牛はどうしても小ぶりなので、食い込みや血統の見極めが大事になります」。血統、生育環境、飼料…2年後の宮城大会への挑戦は、もう始まっているのだ。

 花巻地域青年部は地域活動に意欲的で、川村さんの暮らす湯本地区でも草刈り作業や青米集荷など定期的に続けている。「そんな盟友たちが一堂に会する機会を作ってみたい」と川村さん。各地域の状況を理解し、さらに人が繋がることで青年部自体がさらに活性化することを望んでいるという。一人では解決できない問題が山積する現在「共同の力」はとても大きいと、川村さん自身がよく知っているのだ。

(取材日/平成26年12月8日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美) 

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