一関市 米生産農家 遠藤清行さん地域の若手農業者のリーダー、遠藤清行さん


管理するのは受託を含め30ヘクタールの水田


春の代掻き作業。効率よい作業を心がける


水田のそばには宅地や商業地も広がっている

 一関市中里。地域を南北に縦断する北上川流域には、過去の水害経験をもとに大規模な遊水池が整備されている。市街地を守る周囲堤の内側には農地が広がっており、四季折々、移り変わる農の風景はとても雄大である。遠藤清行さんは、この遊水池にある農地を管理している稲作農家。受託をふくめおよそ30ヘクタールの水田を手がけている。

 「うちは代々の米農家で、小さい頃から親父たちの仕事を見て育ちました。岩手大学農業過程を修了後は農業機械販売や消防設備などの会社に勤めたのですが、結婚して子どもが生まれたことをきっかけに27歳で就農しました。農業なら、子どもたちにきちんと関わる時間が持てると思ったからです」。一度は別の道を歩んだが自分の家族を持ったことで、遠藤さんは「家業」の意味を見いだした。


地域の幼稚園児と行った田植え体験


田んぼに入るのは初めての子どもたち。どろんこ


子どもたちに声がけをする遠藤さん


多くの園児とその父兄が参加した田植え体験

 農業をやる。そう決意した遠藤さんは、精力的に動いた。そのひとつが活動休止中だった「一関地方農村青年クラブ(現両磐4Hクラブ)」の再結成。先輩農家や地元の仲間5人に声をかけ、地域の青年農家たちの交流の場を作り上げた。その中から稲作農家と畜産農家の連携を目指した「両磐資源循環型農業研究会」が発足し、堆肥を使った米栽培の技術を仲間とともに研究した。平成23年からは特別栽培米の生産をスタートさせ、同時に販路拡大にも取り組みはじめる。現在は「いちのせき米クラブ」として、生産した米の販売まで手がけるように。販路はすでに関東圏へも広がっており、顧客から直接注文が入るようになっている。

 この活動と平行して、遠藤さんが熱心に取り組んできたのが食育だ。地元の幼稚園の子どもたちを対象に田植えから稲刈り、野菜栽培などさまざまな農業体験を提供する。なかでも昨年からスタートした中里小学校2年生の体験授業では、定植前の何もない畑に子どもたちを連れて行き、マルチ掛けや堆肥入れを見せている。「そこから見せるのが食育だと思うから。幼稚園の田植えでは、田植機に乗せたり手植えも体験してもらいました。こうした活動が出来るのも、青年部や4Hクラブなどのメンバーに恵まれたからです」。

 米や畜産はもちろんりんごや野菜など、さまざまな若手生産者が知恵を絞り高めあう組織活動。遠藤さんも、りんご生産者が実践する手づくり保冷庫から米の保管のアイデアを得たりと、さまざまな刺激を受けている。「ある意味、別な職種を見ている感覚」と笑う。


一関の農業を牽引する「いちのせき米クラブ」


8月末、頭を垂れはじめた一関の稲田


「地域を担うのは農業」。笑顔にも自信がこもる

 遊水地は、生産活動のみならず地域や人命を守るという役割も担う。だからこそ遠藤さんは「米を作る部分以外での生かし方も考えるべき」と、地域のまちづくり協議会にも参加する。堤防に植えられた桜の木の生かし方、凧揚げイベント等々、アイデアは尽きない。

 「これからの地域づくりを担っていくのは農業だと思っています。米づくりでも、将来は一関産ひとめぼれや地元の地域ブランドを発信していきたい。そして、自分たちの活動を見て育つ地域の子どもたちが、やがて次世代の仲間となっていくようなモデルケースを作りたいとも考えているんです」。

 4Hクラブ、JAいわて平泉青年部協議会、まちづくりのメンバー…。たくさんの仲間と語り合うことで、遠藤さんは夢をひとつひとつ実現している。

(取材日/平成28年6月8日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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