品種はひとめぼれ。昨年から限定ふるさと米作りを行っている代々の米づくりに挑んでいる及川英伸さん


父の代から使用する木製の精米機は自家用米に


稼働を控えた玄米貯蔵タンクを確認


乳牛や肥育を手がけていた時代の黒板が

 「昔も今も、うちで作る米が一番美味しいと思っています。これからも妻や娘、そして孫たちのためにも米づくりを続けていきたいですね」。

 県南の穀倉地帯、金ヶ崎町で代々稲作を営んできた及川英伸さん。平日は医薬品販売会社の県南営業所所長として忙しい日々を送るかたわら、240アールの水田でひとめぼれの栽培に取り組んでいる。「米の栽培時期は休みなし。それでも苗づくり、いもち防除など地域の協力があるから続けていけるんです」。今年も、丹誠込めた米の収穫が間近に迫る。

 祖父の時代は4ヘクタールほどの水田に加え、乳牛を飼育していたという及川家。大きな変化は、東北自動車道の延伸にともない農地を売却したことだった。それでも父は農機具会社に勤務しながら農業を続け、いっぽう及川さんは大学卒業後から現在の職場に勤務。以来父の農業を手伝ってきたが、その父が入院することになり40代で家業を引き継いだ。

 「最初の米づくりは、病床で父に肥料設計の配合を聞くところから。機械のオペレーターはやっていたものの籾すりの経験がなくて、初出荷の時は旧式の計量器を使ったため一袋の重量が足りずに、検査後に妻とふたりで100袋の米を詰め直したこともありましたね」。


「米は刈ってみないと分からないから」と及川さん


26年産の自家用米。間もなく新米も登場する

 仕事を持ちながら試行錯誤の米づくり。それでもやはり、自家産米の美味しさには絶対の自信があった。それから10年以上が経ち、集落の水田も基盤整備が実施されるなど地域農業の在り方も変化。現在、及川さんの暮らす集落では個人営農を続ける5軒の農家で実行組合を組織し、JAの営農指導を受けながら米や野菜の作付けを展開。また近隣にある産直「六ちゃん」の六原営農組合とも協力し、野菜出荷などのほか産直の祭りにも参加しているという。「米の単作は状況的に考えても厳しいけど、ここ金ヶ崎は昔から米と牛、野菜などの複合経営が行われてきた地域だから」と及川さん。多様な作物を栽培できる環境と生産者の協力により、地域農業の伝統が途絶えることなく続けられている。


新ブランド米登場を伝える新聞に「期待出来る」と及川さん


及川さんの孫たち。おじいちゃんのお米のファンだ


及川さん夫婦と家族が勢揃い

 今年の秋は、米にまつわる明るいニュースが続いた。まずは米価。17年県産米のJA概算金は1万2800円(ひとめぼれ)と16年度に比べて1000円のアップ。また10年をかけて完成させた岩手県産米の最高品種「金色の風」がついに市場にデビューを果たしてもいる。

「米価が上がるのは素直に嬉しいし、新しいブランド米の登場も期待が持てる。県南産ひとめぼれは何十年も『特A』の評価を頂いてきたわけだし、前沢牛のような農産物ブランドもある。その上での米の新品種登場ですから。ひょっとすると、金色の風はひとめぼれに続いて県南地域を代表する米になっていくのかもしれませんね」。

 そう言って微笑む及川さん。天候不順や大雨、台風など、今年も農業を取り巻く環境は厳しかった。それにも関わらず農地はまばゆい黄金色に染めあげられ、今、黄金色のなかに及川さんの孫たちの歓声が響き渡る。この幸せな光景がいつまでも続くことを願う。

(取材日/平成29年9月23日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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