スマイル直売所のみなさんと外舘さん(右)

いわての底ぢから

第3回野田村 スマイル直売所


4月5日に移転オープンした「スマイル直売所」


野菜や果物、総菜や菓子類などの加工品も充実


朝の納品。登録部員は40名で、5月には新メンバーも

 陸中野田駅からほど近い場所にあるJA新いわて野田支所。周囲には商店や公共施設が立ち並び、車や人の往来が途切れない。そこかしこに残る更地が、津波がここにまで押し寄せたことを伝えているが、それでも風景は少しずつ日常を取り戻しつつあるように見える。

 「声をかけてくれる人が増えてきました。気持ちが、前向きになってきた証と思いますね」。

 店頭に立ち、地域の人たちとふれあう中で感じる“復興”のきざし。外舘ミツエさんが代表を務める「スマイル直売所」もこの春、野田支所の改装に合わせて建物を移転・新築、4月5日に新装オープンを迎えた。メンバーにも、数人ではあるが新しい仲間が加わった。

 スマイル直売所は、支所内の施設を使って2010年10月オープン。「女性部員の減少をくい止め、何歳でもできる産直活動をしようと立ち上げました」と、久慈中央支所南分会女性部長でもある外舘さんはいう。野菜や漬物、総菜などに加え、同町内の「安来(あんくる)直売所」の名物、野田塩のにがり入り豆腐も販売、市中の産直として好評を得ていた。だが開店から半年も経たない翌年3月に東日本大震災が発生、建物も津波に襲われた。「ドアはなくなり、室内は泥だらけで…。再開はダメだろうと思いました」。外舘さんが振り返る。


水曜日は豆腐の店頭販売あり。協力してテントを設営


安来直売所の米田やすさん(右)と、米田サキさん


大人気の田楽豆腐。香ばしくふわふわの食感に感動

 しかし県内の女性部から届けられた支援物資を配って歩く中で「野菜も売ってほしい」との声が寄せられるようになり、外舘さんらは再開を決意。女性部員とJA職員の協力を得、建物を失った安来直売所にも声をかけ、同年5月にスマイル産直を再開させたのである。

 朝の産直は忙しいものだがスマイル直売所の場合、水曜日は格別だ。いつもの納品に加え、この日は店頭で安来直売所の米田やすさん、米田サキさんらによる田楽豆腐の実演販売が行われるからだ。みんなでテントを立てて炭火をおこし、作り立ての豆腐に自家製味噌を付けて焼き上げる。これを楽しみに待っている常連客も多く、昼過ぎには売切れるほどの人気商品という。一方、産直内ではメンバーが軽トラックに積み込む商品の準備にいそしんでいる。毎週水曜と土曜の週2回、村内の仮設住宅などを回る移動販売は震災直後からずっと取り組んでいる活動だ。「最初は野菜だけだったけど、お客さんからの要望で色々と増えていきました」と外舘さん。野菜や果物に混じり食料品や豆腐に牛乳、肉に魚に菓子類等々…なるほど、軽トラの中は小さなスーパーのようである。


米田地区にある「安来直売所」は毎週日曜のみ営業


野田中グランドの仮設住宅へ移動販売


野菜から肉や牛乳まで。買い物の楽しみも大切

 移動販売に同行した。巡回するのは3カ所。野田中学校グランドの仮設住宅では、到着を待ちかねた住民が集まってきた。「いらっしゃいませ~」「あら久しぶりだぁ」「○○さん、これはいらない?」と、手に手にカゴを持ち、商品を物色するお客さんたち。買い物が終わっても立ち去らず、そこかしこで顔なじみ同士で井戸端会議だ。「雨が降っても出てきてくれる。本当にありがたいです」と話す外舘さんも、いつの間にか井戸端会議に加わっている。野田村生活支援ハウスせきれい、泉沢地区応急仮設住宅でも、ほがらかな会話と笑顔が交わされた。

 店舗と移動販売で、地域の食を支えてきたスマイル直売所。外舘さんが今後力を入れていきたいのは加工分野で、すでに安来直売所のおからを使用した「おからもち」と、県北地方の郷土食である凍み芋粉を使った「凍み芋もち」を開発した。どちらも昔からあった食べ物だが、材料を工夫して若い人にも食べやすい味にしたという。「これからも組合員の知恵を借りて昔の郷土食の掘り起こしをしていきたいし、もっと漁業関係の人にも産直に入ってもらいたいと思っています」。半農半漁の野田村では、農業者と漁業者の区別はない。しかも震災で漁業が大きな痛手を被った今、支え合いの思いはひとしおである。

 そんな外舘さんとともにスマイル直売所を立ち上げたメンバーのうち、2名が震災の犠牲になったという。「相談相手になってくれる大事な2人だった。だから、私らが頑張んないと」。

(取材日/平成25年5月8日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)


「せきれい」にて。この日常連のおばあちゃん達はお休み中


泉沢地区応急仮設住宅でも顔なじみが待っていた


凍み芋もち(左)とおからもち。ほのかな甘みがあり、焼いて食べても美味


外舘ミツエさん。「おからもちを看板商品にしていきたいです」

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