艶やかな「ころ柿」。寒風に当てることで白粉に覆われる

いわての底ぢから

第13回JAおおふなと「気仙小枝柿」


日頃市地内にあるJAおおふなと農産物処理加工・集出荷施設


柿クリップに挟み、白粉がふいて来るのを待つ


営農指導員として柿栽培に熱心に関わる伊藤諒さん

「子どもの頃から食べていたけど、いま改めて、柿ってすごい可能性を秘めた農産物なんだと思っています」。
 大船渡市日頃市町の高台にある、JAおおふなと農産物処理加工・集出荷施設。平成26年11月に完成した真新しい施設の一角にぶらさがる、色鮮やかなオレンジ色の干し柿のすだれを見ながら営農指導員の伊藤諒さんが話す。三陸町越喜来にあった農産物加工処理施設が津波で流されて3年半、ここ日頃市で再開した特産の干し柿「ころ柿」づくり。本格的な生産が始まる平成27年度に向け、生産に携わる人々の期待は高まっている。
 気仙地方で古くから行われてきたころ柿づくり。使うのは種のない渋柿の一種・小枝柿で、小型だが果肉が緻密で干し柿にすると驚くほどの糖度が出る。もともとは農家の軒先で作られる程度の産物だったが、昭和49年の地域農業振興計画を受け60年頃から越喜来地区で商品化、本格的な生産加工がスタート。種がないことから和菓子やソフトクリーム等にも利用され、三陸名物として定着していた。そんな最中に起きた大震災で、「加工場からは海が見えた」というほどの越喜来の施設は、跡形もなく流されしまったのだという。


新たに導入した窒素乾燥機。乾燥時間の短縮に繋がった


乾燥した柿を手で整える「整形」という作業


平たい円形に整える。「気仙小枝柿」ならではの形

 新天地での再開にあたっては、建家はもちろん生産機械も刷新。全自動皮むき機ほか低酸素式窒素乾燥機も導入され作業期間の短縮も可能になった。とは言っても、皮を剥いた柿はまず2週間から3週間自然乾燥させ、さらに窒素乾燥機に入れて2〜3日かけて水分を飛ばす。その後は1個1個手で揉んで整形し、クリップにかけて寒風に当てて表面に甘い白粉が出て来るのを待つ。「時間もかかるし、天気や柿の状態を見極めながらやらなくちゃならない。マニュアルはあるけど絶対その通りにはならない」と伊藤さんはいう。
 訪れた日はちょうど、伊藤さんいわく「一番難しい」という整形作業が佳境。表面が真っ白い粉で覆われているのがいいころ柿の条件で、粉がうまくふくかどうかを作用するのが整形という。スタッフの手の中で、扁平な丸形に整えられていくオレンジの柿。「丸ではなく平らにするのがころ柿の特徴。こうすることで中の繊維が壊れ、色も飴色に変わってきて甘みも増すんです」。新しい施設内で行われている、どこまでも地道な手仕事に圧倒される。


「干し柿はブランデーやワインにもあいそう」。会話も弾む


再開を機にパッケージも一新。新規顧客獲得に期待


大きさや色で厳選したものはプレミアム品として贈答用に

 この伝統のころ柿づくりと平行し、JAおおふなとがスタートさせたのが「あんぽ柿」づくり。通常のころ柿の水分量30パーセントに対し、あんぽ柿は50パーセントあり表面に粉もふかない。それゆえジュレのように柔らかく、ころ柿を食べ慣れた人には新鮮な食感だ。「ころ柿は年配者向けというイメージだけど、あんぽ柿は若い人へ食べて欲しい」と伊藤さん。偶然にもこの日、市内でイタリア料理店を開店させるという男性が施設を訪問、試食したころ柿とあんぽ柿の食感に驚きつつもレシピの考案に意欲を見せていた。さらに既存のころ柿も「気仙小枝柿」という名に統一し、大きさや色で厳選したプレミアム品ほか3タイプの商品を販売していく形式とした。ちなみにプレミアムは12個入りで4320円。「かなり高めかもしれないが、今回を機会に正当な価格にしたい。だって小枝柿はおいしいんですから」。生産者とともに干し柿づくりに取り組む伊藤さん、誰よりも気仙小枝柿の可能性を信じている。
 三陸の農産物ブランドの確立へ向け、ついに動き出したJAおおふなとの干し柿づくり。「日本一おいしい柿」を目指し、一歩一歩、歩みだしたばかりである。

※平成27年度分は、12月中旬より販売予定

(取材日/平成26年12月8日 取材・撮影/フリーライター 井上宏美)


スタッフは全員三陸出身。干し柿も食べ慣れた味


生の小枝柿。気仙地区以外で栽培すると種ができてしまうという

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