いわての輝く女性

平成22年4月 JA岩手県女性組織協議会 三役座談会

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いわての食を守るため 今、出来ることとは

平成22年4月
JA岩手県女性組織協議会 三役座談会

JA岩手県女性組織協議会三役の方々にお話を伺いました。

プロフィール

熊谷富民子さん

JA岩手県女性組織協議会会長。花巻市宮野目農協に勤務後、紫波町の熊谷家に嫁ぐ。現在は「しわ黒豚」を生産するほか養豚のたい肥などを利用した肥料も開発、水稲の栽培などに使用する無化学・自然循環型農業を行っている。米は有機認証を取得し、地区の産直内の加工・飲食施設「あぐりちゃや」で提供されている。花巻市大迫出身。

葛巻輝さん

JA岩手県女性組織協議会副会長。宮野目農協、花巻農協に勤務後平成16年に退職、農業に従事。水稲を中心に小麦やキュウリなどの野菜も栽培し、生産物は花巻市の産直「だぁすこ」に出荷。グリーンツーリズムを積極的に受け入れるほか、女性部有志の「こだわり米グループ」で子どもたちと米づくりに取り組んでいる。花巻市出身。

高橋弘美さん

JA岩手県女性組織協議会副会長。学校卒業後は上京し、東京で会社勤務を経験。転勤で盛岡を訪れ滝沢村の専業農家のご主人と結婚。現在は滝沢村鵜飼地区では唯一の認定農家として約6haの水稲を栽培しているほか、地域で取り組む集落営農にも協力し、米と大豆のブロックローテーションを推進、拡大している。山田町出身。

出来ることから始めよう
給食への地場野菜納品

※対談は、敬称略

司会:
今、地産地消や食育が注目されています。農家女性の立場からどう考えますか。
熊谷:
私たちにしてみれば「地産地食」、地元の人が作ったものを地元の人が食べることを主体にしたい。農協や市場出荷の場合、今までは作目によってケースが決まっていたのですが、そういう企画物ではなくても立派な野菜はあるんです。それらを価格面からどのようにして評価していくか。じつは私たちの十二神集落では、地域の子どもたちやその保護者と一緒にダイコン作りに取り組んでいます。収穫したダイコンは学校給食に提供しているほか、凍みダイコンにしたり味噌ダイコン用に加工もしています。

高橋:
滝沢村でも5年ほど前から学校給食への納品がスタートしました。それまでは5600食のセンター方式のために地場産は入れられなかったんですが、女性部から「1品でも2品でもいいから地場産を使えないか」と給食センターへ働きかけて実現しました。当初はダイコン、ネギ、りんご、ピーマンぐらいでしたが今は品目も大分増えてきました。学校からは「子どもたちの好き嫌いがなくなった」とおっしゃってもらって、これが嬉しかったですね。
熊谷:
自分たちが作っていたり、地場産であることは大きい。生産者の名前や顔が子どもたちにも伝わっているんですね。
高橋:
今では給食センターが「どんどん(野菜を)出してください」と言ってきます。この意識変化は大きいですね。さらにJAの協力と農業委員の努力、そして私たちも当番には参加するなど皆が出来ることをしてきた結果でしょう。また給食のメニューに地場産の食材を明記してもらうようになったら滝沢村の議会も注目して、結果として村全体で食農に力を入れるようになりましたよ。

葛巻:
花巻市も食農には意欲的ですが、旧花巻地区では市場との関係もあって給食への直接納品はまだ始まっていませんね。でも東和地区や石鳥谷地区などでは産直や女性部が納品窓口になるなど形態はさまざまです。大事なのは「子どもたちに作っているものを食べさせたい」という、私たち生産者の思いを理解してもらうこと。そこで私たちの集落では、子どもたちを中心にしながら、PTAや食生活改善協会、老人クラブにJA女性部なども加わって、料理講習会など食べ物を中心にした楽しみ会を年3回開くことにしました。
高橋:
私たちでは学校の給食時間に訪問することもあるんですが、「おばちゃんたちが作ったんだよ」というと、子どもたちは「美味しい」って言ってくれます。すると私たちが行かない日でも、先生に「あのおばちゃんに美味しいって伝えてね」っていうんだって(笑)。結局、本当に美味しいってことを子どもなりに伝えたいと思っているんですね。
熊谷:
子どもたちに地元のものを食べてもらうことは大事だね。さらに生産現場に子どもたちを参加させれば食農にもなり、食べ残しだってなくなるでしょう。生産者も、たとえ我が子や孫ではなくても「隣の子どもに食べさせるんだ」というような、はっきりした意識が生まれますからね。
葛巻:
そう、生産者側の気持ちも大きいですね。どこでも自校式(単独調理方式)でやっていた頃は地元の人が学校に持っていくという協力関係もあったのでしょうが、今のようにセンター方式で何千食も作るようになると難しい。でも石鳥谷地区みたいに生産者自身が出せる品目を調整し、業者とも一緒になってメニューに合わせた出荷をやっているところもある。完全納品と無理に背伸びをせず、出来るところから始めていくのがいいでしょうね。

素材販売から加工販売へ
産直のかたちも変化する

司会:
子どもの親世代、大人たちの食環境への関心を呼び起こすにはどうしたらいいでしょうか。
熊谷:
今の農家の多くは兼業で栽培品目も少なく、極端な話、農家でも野菜は買って食べる状況になっています。それを考えれば、せめて自分たち家族が食べる分の野菜ぐらいはいろいろと作っていかなくてはと思いますね。自給自足の生活に戻らなくちゃ(笑)。

葛巻:
例えばおじいさんやおばあさんが家庭菜園を担当するなど、家族の分担があってもいいですよね。じゃないと農業が機械化や専業化してしまい、高齢者のやりがいや行き場がなくなってしまう。また、家庭菜園だけではなく産直に出荷すれば収入を確保していく方法も生まれる。
熊谷:
そう、産直が成功している理由は高齢者の参加もありますね。でもコンビニと同じで、誕生するいっぽうで閉鎖する産直もある。これまでの産直はただ作った農産物を並べて売るだけの場所でしたが、これからは、さらに加工して売るというような「第六次産業」の発想が重要になりますね。豆ならば味噌を作り、作った味噌にダイコンを加えて味噌ダイコンにするというように。生産物に付加価値を付けるという作業をしていかなくちゃ。
葛巻:
岩手の手づくりのよさを伝える定期便のようなものがあるといいなと思います。JA花巻の産直「だぁすこ」では首都圏などの県人会などに定期便の野菜ボックスを宅配していたこともあったんですが、野菜だけではなく、熊谷会長のいうような加工物があってもいいと思う。どんな風に調理して食べるのか説明書きを一緒に入れてね。
高橋:
以前、娘の友人にスイカを丸ごと1個送ったら、すごく感動されたんです。都会の人はカットされたスイカしか見たことがないから(笑)。これでわかるのは、目先を変えれば販売するチャンスはどんどん広がるってこと。そうやって岩手の農産物ファンが増えていけばしめたものですよ。

熊谷:
それも県内各地の農産物を組み合わせて「ふるさと宅配便」として届けるようなね。
葛巻:
お互いにいいものを出し合って発信していく。それこそが協同組合の原点ですね。みんなに美味しいものを届けるという、いわば「お母さん」の発想。第六次産業というと堅苦しい感じですが、こうやって考えていけば取り組みやすい。
熊谷:
大量生産は出来なくても、季節のものを季節感を出しながら販売する。こういうきめ細やかさはやはり食品業者にはできないことでしょうからね。

食生活の見直しと交流が
女性部活動の大きな柱に

司会:
最後に、食を取り巻く環境で気になっていることや消費者へのメッセージをお願いします。
熊谷:
今の若い人たちは、ご飯はおかずがかかるけどパンなら袋を破ってすぐ食べられて便利と考えるらしいですね。でもパンなどの単品だけ食べて暮らしていけば栄養バランスが偏って、いずれは人間そのものがおかしくなっちゃうと思うんだよね。

高橋:
そうですね。食べることに意識が向かないというか、「どん欲」でないんだよね。それは私たち親世代にも責任の一端はあるかもしれない。ちょうど子育ての時期が農業の技術や経営規模が上がっていく時期と一緒だったから忙しくて、十分に手をかけて食事を作ってやれないもどかしさはあった。そうして大人になった世代も、今はとにかく働かなくちゃならないから、やっぱり炊飯器だけセットしてあとは子どもたちにまかせている。
熊谷:
女性部の中にはさまざまな伝統の技や知恵を持った方々がたくさんいます。米粉まんじゅうやほどもちなど昔は本当に食べ物を大事にしていたのに、それがうまく生かされていない。今こそ伝統食を見直して、いいものが受け継がれていくようにしないと。「もったいない精神」と家族内での食生活の見直しを結びつけたい。それが女性部活動のひとつになっていくと思います。
葛巻:
よく認知症などのお年寄りが、作物を通して土に触れることで気持ちが癒されたり情緒が安定してくるということを聞きますよね。私がグリーンツーリズムを受け入れているのは、都会の子どもたちはもちろん地域の子どもたちにもそういう体験をして欲しいから。その活動の中で昔の伝統行事とか行事食など、今埋もれていることを発掘しながら食のよさを見直していければ本当にいいと思いますね。お年寄りも意欲はあるけど遠慮して参加しない方が多いので、そういう方にもどんどん協力してもらってね。
熊谷:
今は高齢者っていわずに後期技能者っていうんだってよ(笑)。考えてみれば都会の人だって元々は農家だった訳でしょう。そういうルーツに気付いた人が農業に触れたい、昔の暮らしを知りたいといって参加するのがグリーンツーリズム。本当の心の交流が、形だけではない農業の六次産業化にも結びついていくと思う。
高橋:
産直活動にしろ学校給食にしろ、もっともっと食にどん欲になって欲しい。みんなが食について目を向けきちんと考えるようにならないと、食べ物を作る人もいなくなっていくと思いますよ。
葛巻:
でも最近は生協などの消費者グループも生産現場を見に来るようになりましたね。花巻ではグループの方や町場の方も料理研究や味噌加工などの女性部活動に参加しています。実際に味噌づくりを直に体験することで、商品への理解も深まっていると感じますね。

熊谷:
そうそう。私たちの組織は平成8年、JA婦人部から全国規模でのJA女性部になった時点で、非農家や消費者の方でも活動や理念に賛同して頂ける方なら加入できるようになったんです。ですから地域のなかでぜひ近くの女性部の門を叩いて欲しい。
高橋:
料理教室はじめ色々なグループがあるし、常に生活感のある活動というか、実生活に役立つ知識が得られると思いますよ。
熊谷:
年代も経験もさまざまな女性が集まっているけれど、フラットな状況で情報交換ができる。きっとさまざまな経験が出来るはずだからね。これまでの嫁姑のような家族単位の縦割りの関係を、横に結びつけていきたい。その役割を果たすのがJA女性部ではないかと思います。

(インタビュー・構成/フリーライター 井上宏美)

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