いわての輝く女性

平成23年12月 奥州市江刺区 江刺生活改善グループ連絡協議会

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平成23年12月
奥州市江刺区 江刺生活改善グループ連絡協議会

手前左より、高橋敬子さん、菊地キヌさん、千田レイさん、佐々木エイコさん、中段左より、佐藤千代さん、佐藤美子さん、後ろ左より、及川ラクさん、佐藤説子さん、小沢ムツ子さん、菊地静江さん、菊地美枝子さん

 「農の生け花」をご存知だろうか。東京農業大学の横井利直教授夫人である横井友詩枝さんが30年ほど前に考案した生け花で、さまざまな農作物を素材に、民具や農具を花器やあしらいなどに配するなど自由で楽しい雰囲気がある。愛好者は全国におり、3年に1回、全国大会も開かれているほどだ。「農の生け花は夕飯の材料選びとおんなじ感覚。野菜や道具などお互いに融通し合って作るのだからね」。朗らかに教えてくれたのは、江刺生活改善グループ連絡協議会会長の菊地静江さん。その横を、たくさんの野菜や花、古い民具を抱えた仲間が忙しく行き交っている。菊地さんらは同協議会内の農の生け花愛好者グループであり、この日は恒例の展示会準備のため奥州市江刺区総合支所を訪れていた。

江刺生活改善グループ連絡協議会会長の菊地静江さん

江刺総合支所のホールを使って農の生け花の準備

メンバーが畑でとれた野菜を持ち寄って集まった

 江刺区で農の生け花づくりが行われるようになったのは昭和60年代のこと。この時期行われていた生活改善運動の一環として、農の生け花の講習を受けた同協議会のメンバーによって「菜園」「わかば会」「ふれあい」「こぶし」という4つのグループが作られた。その後はメンバーの交流と研鑽を兼ね、県内で農の生け花活動をとりまとめる世話人を講師に研修会を行ってきたが、6年前から市の農林課のすすめもあって市庁舎での作品公開に。今回は4グループ合計21人のうち11人が作品づくりに参加した。「みんなが来る市役所だから見てもらえるし、関心も持ってもらえる。それが大事なことなんですよ」と菊地さんはいう。

タラの木。春先の芽は有名だが花を見たのは初めて

収穫に使われた箕(み)。今では見ない農具のひとつ

ナスも花材に。バランスを見ながら鉄器に生けていく

 そんな準備会場のホールに運び込まれた“花材”のバラエティたるや驚くばかり。たまねぎ、かぼちゃ、ねぎ、夕顔、ミニトマト…とりどりの野菜にキクやオミナエシ、ススキなど野の花もわんさか持ち込まれている。思わずこれは何?と聞いたのはタラの木の花。「こっちはオクラの花。1日しか咲いてないのよね」と、立派なオクラまでついたひと枝を、花器にどんと盛り込んでいく。花器のほうも背負い籠や手桶、染付の火鉢や鉄器、今ではほとんど見ない箕(み)やケラなど古い農具も総動員だ。これらをバランスを見ながら生けていき、農村の風景や暮らしをイメージする作品に仕上げる。とはいえ、ナスを見ながら「塩漬けにすると美味しそうだなあ」と誰かが言えば「昨日乱切りにして麺つゆにつけたっけ美味しかったよ」とホールの中は和気あいあい。ああしよう、こうしたら、と話しながらの作品づくりは一種のパフォーマンスアートのようにも見えてくる。非常にユニークな活動だ。

今朝咲いていたオクラの花。大振りで美しい花だ

菜園グループのみなさん。作品と一緒に

ふれあいグループはおふたり。タイトルは「初秋」

 こうして完成した作品は4グループそれぞれの個性が際立つ仕上がりに。野菜に果実に野の花、古民具に農具などの組み合わせの妙は、これらが生活の中にある農家女性だからこその感性だ。「こういう農具も機械化がすすんでほとんど捨てられた。でも二束三文の農具だって、こうしてやれば息を吹き返すでしょう。横井友詩枝先生は、農村の新しい価値を見つけてくれたんだと思います」。メンバーのひとり、佐藤美子さんがしみじみと話してくれた。

こぶしグループのテーマは「アグリフラワー」

わかば会のおふたり。人に見立てた夕顔が

生け込み作業が終わって談笑のひととき

 市庁舎での2日間の展示を終えた後、同協議会の作品は北上市の「岩手農業研究センター」の参観デーのイベント「農の生け花展」にも出品された。県内各地から多くの作品が並ぶなか「がんばろう江刺」と描かれた夕顔と色鮮やかな生け花は、ここでも多くの人の目を引きつけていた。

ひょうきんな夕顔人形。復興への思いも込めた

農業研究センターに並んだ菊地さんらの作品

今年で15回の開催を重ねる「農の生け花展」

(取材日/平成23年8月25日、9月3日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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