いわての輝く女性

平成24年4月 JAおおふなと女性部「はこべの会」

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JAおおふなと女性部「はこべの会」

産直にて。手前左から、田村光子さん、千葉レイ子さん、朴澤美代子さん、金野よし子さん。後ろ左から、今野夏子さん、山田則子さん、白幡裕子さん

JAおおふなと女性部長の朴澤美代子さん

猪川町の住宅街に立つ「はこべの会」の産直施設

開店は毎週日曜の朝7時45分から

 色とりどりのペンキで野菜を描いた看板が、小さなトタン小屋の壁に掛けられている。中央には、力強い筆致で「元気」の2文字。「これはね、大船渡に来た震災ボランティアの人たちが『やっぺし』って言って描いてくれたの」。朗らかな声で、JAおおふなと女性部長の朴澤美代子さんが教えてくれた。さまざまな人の思いが込められたこの小屋は、猪川支部のメンバーで結成された「はこべの会」が運営する産直だ。平成11年に猪川支店の敷地でスタートし、8年前からは猪川小学校にも近い住宅街で毎週日曜日のみ店を開けている。

野菜ほかメンバーが加工した漬物や乾物も並ぶ

値段はほとんどが100円。常連も多く開店間際は混雑

入居者からの要望で始まった仮設住宅への移動販売

 大船渡市、陸前高田市、住田町の3市町を管内とするJAおおふなとは、昨年の東日本大震災で甚大な被害を受けた。女性部の10支部も同様で、陸前高田市内に加え大船渡市でも綾里、盛の2支部が今も休部している。そのような状況にありながら、朴澤さんと猪川支部のメンバーは震災の翌日には立ち上がっていた。手始めは、当時約300人が避難していた立根町の県立福祉の里センターへの野菜の提供。給食用にと準備していた野菜ほか各自の家からも持ち寄り、軽トラでの納品を1週間続けた。そして「お客さんが待っているから」と4月には猪川町の産直を、5月からは大船渡第一中学校への野菜納品も再開した。7月からは毎週月・水・金の週3日、長洞地区にある仮設住宅への移動販売も開始。「最初は一軒一軒歩いて回ったけど、この頃は移動販売を待っててくれる人もいますよ」と朴澤さんはいう。今では長洞のほか、要望のあった市内4カ所程度の仮設住宅へも回っている。

野菜の種類、調理法、あれこれ会話が弾む

「じゃがいもの会」が力を出し合って建てた活動場所

ぞうり作りにお茶っこ飲みに。みんなの憩いの場所だ

 この元気はどこから湧いてくるのだろう。答えは、はこべの会と同じく猪川支部のメンバーが結成した「じゃがいもの会」の活動場所にあった。同会は、近隣に借りた畑でニンジンやジャガイモ、タマネギなどを作って中学校への野菜納品と産直活動を支え、農作業のない冬場は布ぞうりを作って販売。そうやって貯めたお金で作ったプレハブ小屋、こここそ「はこべの会」のメンバーも共に集う「元気の泉」の場所である。布ぞうりの材料となる大量の古布に囲まれた室内では、千葉美喜子さんや金野カツ子さん、金野愛子さんらがぞうりを編み、新沼國子さんが花緒を作っている。「5年前に支部のメンバーで自主的に(布ぞうりの)講習会をしたのが初め。今は市の産業まつりやイベントで売っているね」と千葉さん。使わなくなった布団の生地をゆずりうけ、ひとつひとつ、ていねいに作っている。その見事な仕事ぶりに感心するが、もの作りの合間にはお茶を飲みながらよもやま話に花が咲く。というか、手を動かしながらも会話が止むことはなく、小さな室内にはいつも笑い声が響いている。

花緒は芯地を入れて作る。柔らかくて丈夫になる

裂いた布を編んでいく。1日2足は作っているとか

完成品。活動場所に来た人にも販売してくれる

 内陸にある猪川町に津波はやってこなかった。しかし、ここにも大切な家族を亡くしたメンバーがいて、全員が親戚や友人知人など縁のある人々を多かれ少なかれ失っている。「津波のあとはすぐにジャガイモの種まきだったから泣いてる暇なんかなかった」「悩みがあっても打ち明けられる。この場所があったから本当に助かった」。口々に思いを話すメンバー。想像を絶する喪失感は、春の農作業に明け暮れる日々、そして共に汗を流す仲間の存在が癒してくれた。「産直に給食に移動販売に、野菜を作って出さなきゃならない。あっという間に毎日が過ぎていった」。これまでの1年間を振り返るように、朴澤さんがいう。

布ぞうり以外にもさまざまな布小物を作っている

おしゃべりがメンバーの楽しみ。お茶うけは干し柿

活動場所で。手前左より、千葉美喜子さん、金野カツ子さん、新沼國子さん、山田則子さん。後ろ左より、金野よし子さん、朴澤美代子さん、金野愛子さん、千葉レイ子さん

 会の名前にもなっている「はこべ」は、春になると真っ先に葉を伸ばし、次から次へと増えていく草。「一番強い草だからって、メンバー最長老のおばあさんが付けてくれたんですよ」と朴澤さんは笑う。その強さとしなやかさが今、この地で大きな力を発揮している。
 さて日曜の産直が終われば、月曜は仮設住宅への移動販売だ。「今日もまた寝る間も惜しんで明日の準備だよ」。朴澤さんたち猪川支部のメンバーは、毎日を笑顔で、全力投球で生きている。

(取材日/平成24年3月11日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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