いわての輝く女性

平成25年5月 JAおおふなと女性部 下矢作支部

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JAおおふなと女性部 下矢作支部

下矢作支部のパワフルウーマン勢揃い。手前右より、伊藤和子副支部長、村上温代支部長

 陸前高田市下矢作地区。地域の活動拠点である下矢作コミュニティセンターに、JAおおふなと女性部下矢作支部のメンバー11人が集まった。本日は支部の恒例行事でもある焼き肉のタレ作り講習会。さまざまな香味野菜と市内米崎産のりんごを使った、特製タレを作るのである。しかし調理台の食材たるや、箱一杯の米崎りんごにたまねぎ、にんにく、しょうが等々…種類も量も相当なボリュームだ。聞けば、本日は12リットル分のタレを作るのだという。「本物の食材を使うことが私たちのこだわり。全部自家用ですしね」と、支部長の村上温代(たずよ)さんが笑う。昼食を挟んでじっくり6時間、和気あいあいと作業を進める。

10キロものりんごをひたすらすりおろす

昼食作りもタレ作りと同時進行。おふかしの準備

JA岩手ふるさとからは新米のひとめぼれが届いた

 会員は15人と少ないが、気心の知れた仲間たちが揃う下矢作支部。JA女性部活動のほかにも食生活改善グループや民生委員など、地域や職場で活躍をしてきたメンバーが多いのが特徴だ。そんなパワフルウーマンが集まった調理場は、作業にともなっておしゃべりのボルテージも上がっていくかのよう。「これぐらい(声が)大きくないと、かだった気がしない。だから内緒話ができないの!」。笑い声に「そうだそうだ~」の間の手まで飛び交う。

しょうがににんにく、たまねぎ。香味野菜のいい香り

煮物と酢の物はお昼に。メンバーは料理達人ぞろい

作業の合間には塩麹作りのレクチャーも

 元気なやりとりの中には、あの震災と大津波の体験談もあった。海岸から5キロほども内陸にある下矢作地区にも津波は押し寄せ、住み慣れた我が家が全壊や半壊となったメンバーも少なくはない。市中心部からの命がけの避難、半壊した我が家で2週間も暮らしたこと、そして大津波が竹やぶを押し倒しながらさかのぼる音…。「矢作はもともと山(内陸)だったけどね、津波が来たから海(沿岸)になっちゃったのさぁ」。語る口調は、あくまでも明るい。

手作りの昼食。米崎りんごは食後のデザートに

気仙地方のお茶請けに書かせない郷土菓子「ゆべし」

藍綬褒章を受けた村上支部長へ、バッグのプレゼント

 すべての材料が鍋に入ったところでさあ昼食だ。ホタテ入りのおふかしは、JA岩手ふるさとから提供された支援米を活用して作り、酢の物や漬物、気仙地方の郷土菓子のゆべしはメンバーの自家製。テーブルいっぱいのご馳走を食べながら漬物談議に花が咲き、村上支部長からの昨年度の活動報告に耳を傾ける。さらに今回は、藍綬褒章を授賞した村上支部長を祝うためにメンバーからプレゼントの贈呈も! 披露されたお洒落なバッグに「ほんとにアンタが選んだのかって!」「あはは!娘が選んだんだー!」と、ここでも大きな笑い声がおきる。

右より、村上満子さん、村上芳惠さん、小野寺ツヤ子さん、村上カツ子さん

右より、鈴木順子さん、佐藤由子さん

右より、佐々木和子さん、村上ツルさん、小野寺かつよさん

 そんなメンバーの様子を見ながら、「仲間のことはずっと頭の中にある」と村上支部長。高齢化に追い打ちをかける大津波の被害で地域の未来を見通せない日々の中、女性部の存在はこれからどんどん大きくなっていくと感じている。この2年間は全国各地のJA女性部による物資提供や炊き出し、そして買い物ツアーなどの支援も数多く寄せられており、副支部長の伊藤和子さんは「外からの情報がたくさん得られるのもJAという組織だから」と実感している。だが何より力強いのは、同じ悩みや悲しみを共有できる仲間がすぐそばにいること。「いつ出てきても受け入れてもらえる。だからこそ下矢作で生きてこられたんだなあと思う」とメンバーの佐々木和子さんが言えば、「こうして声をかけてもらえることが本当にありがたくて」と鈴木順子さんが言葉を継ぐ。お互いに支え合い、今できることをやっていく。「だから絶対に、女性部はつぶしたくないと思っているんです」。村上支部長の決意は、かたい。

あら熱がとれたら瓶に詰める。熟成が進むとまろやかになる

野菜やりんご、さまざまな旨味がとけ込んだ焼き肉のタレ

下矢作コミュニティセンター。ここもかつて避難所になった

 昼食後、あら熱のとれたタレを持ち寄ったビンに詰めて今日の作業は終了した。野菜とりんごが渾然一体となったこの焼き肉のタレ、風味も味わいも絶品だ。それは下矢作の元気と笑顔、そして思いやりがめいっぱい詰まったおいしさなのである。

(取材日/平成25年2月17日、取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

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