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平成22年11月 胆江地区学校給食校協議会

食の匠の技を給食に。調理研修会開催

胆江地区で学校給食に関わる22人の職員が参加

「料理も体で覚えたことが大事」。自著を手に渡辺貞子さん

渡辺貞子さんを囲んだ研修会の参加者

 子どもたちのからだを育み、また地産地消や食育などにも重要な役割を果たしている学校給食。それぞれの学校や給食センターでは様々な調理研修や講習などの機会を設け、職員の知識や技術の向上につとめている。奥州市と金ヶ崎町の関係機関で組織される胆江地区学校給食校協議会では、栄養教諭や学校栄養職員はもちろんのこと5年ほど前からは調理師も加えた独自の調理研修会を開催している。今年の夏休みを利用した研修には、地区内の10のセンターや学校から22人の職員が参加した。
 今回、講師をつとめた渡辺貞子さんは料理教室の主宰などを経て胆沢区で「すいとん」が名物の食事処を切り盛りし、また食の匠として各地で料理教室の講師を担当。昔ながらの家庭料理や行事食をまとめた「つたえたい おふくろの味」も発刊するなど多方面で活躍している。著書には150もの料理が掲載されているが、特に渡辺さんがこだわるのがだしのとり方で、「おふくろのこだわりだし」として材料・調理法がくわしく紹介されている。「今日は、この『だし』の取り方がキーワード。基本をしっかりと覚えることと、集団給食に広げていけるようメニューをピックアップしました」。奥州市教育委員会の上席主任管理栄養士・千葉ひろ子さんの挨拶と紹介に、「お互いの気持ちが通じるような調理をさせてもらいたいと思います」と渡辺さんが、参加者に朗らかに話しかけた。

本日の材料。豊富な野菜に油麩など地方特有の食材も

料理の基本はだし。6人分なので花かつおもたっぷり

白和えのくるみを擂る。手をかけた分美味しい

 この日の献立は、ひじきご飯、けんちん汁、夏野菜の煮物、人参の白和え、くらげの酢の物。
 まずは基本中の基本の「だし」作りから。参加者は5班に分かれ、調理台に用意された昆布と花かつおでだしをとる。「鍋のふたは絶対しないこと。昆布は端に切れ目を入れて水から煮て、沸騰する寸前に引き上げて…」。調理台を回りながら、てきぱきとアドバイスをする渡辺さん。「銅鍋か、あるいは鍋に銅線を入れて煮ると昆布が茶色くならないんですよ」。長年の知恵ともいうべき調理のこつの数々は、毎日給食作りに取り組んでいる参加者にとっても参考になるものばかりのようだ。おなじみの白和えも「豆腐は15分くらい煮て、その上に少し塩を振ると余計な水気が出てこない」「くるみも擂る前にフライパンで軽く水気を飛ばすのがいい」など、経験から得られた『美味しいひと手間』で、水っぽさのない濃厚なひと品が完成した。

中央が食の匠の渡辺貞子さん。家庭料理のプロである

「だしの取り方は…」見つめる参加者も真剣

5品が完成。参加者の分に取り分ける

 さらに「煮物はかきまぜずに鍋返しがいいね。そして火を止めて味をなじませて、それでも味が足りなかったら醤油を入れたりして…」。渡辺さんのアドバイスが始まると、別の調理台の参加者も集合し、話やその手さばきに「はあ…」「ほおお!」と声が上がる。「別の地域で採用された職員も多いので、食の匠を招いて地元料理を教えてもらっています」と、今回の研修会事務局をつとめた奥州市立胆沢学校給食センターの学校栄養職員・柴田未保子さんはいう。そんな研修では渡辺さんの得意料理にも話が及び、「すいとん」の作り方のレクチャーに。「粉1kgに対して水は500cc。固いけど手の温度と力で、手に粉がつかなくなるまでこねるのがこつ」と渡辺さん。あれこれ試した結果、シンプルが一番と気づいたという絶品すいとんは、これから奥州市の給食にも登場するかもしれない。

伝統の味、旬の食材をたいせつにした5品の料理

根菜のうまみが素晴らしい「けんちん汁」

ひじきと野菜がたっぷりの「ひじきご飯」

しっかりした味付けの「夏野菜の煮物」

 さて順調に調理も終わり、渡辺さんを囲んでの会食のあとには意見交流が行われた。「貴重な体験で、原点に戻った気がしました」「『だし』の力を改めて感じ、これからにも生かしていきたいです」。参加者からの感想に、食の現場を見てきた渡辺さんからは給食現場で働く参加者へのメッセージが。「このような料理が給食に登場すれば、子どもたちは家庭に戻って『お母さん作って』と言ってくれると思います。郷土の味を一人でも多くの人に伝承して、子どもたちが心身共に丈夫に育つようにして欲しいと思います」。地産地消や食育などという言葉が登場するずっと以前から家庭料理の伝承活動に取り組んできた渡辺さんの言葉は本物だ。学校から家庭へ。食を通じた活動の輪が広がっていくことも、給食のたいせつな役割と再確認した研修会だった。

「いただきます!」。出来立てをみんなで味わう

「この1食で30品目かな?」。栄養価も大事

意見交流。「基本」の大事さを実感したとの声多数

(取材日/7月26日 取材・撮影/フリーライター 井上宏美)

家庭でも作ってみよう!

※レシピ…渡辺貞子さん著「つたえたい おふくろの味」より

今回の材料(約4人分)
【おふくろのこだわりだし】
  • 水4と1/2カップ
  • だし昆布10cm
  • 花かつお20g
【作り方】
おふくろのこだわりだし
  1. 鍋に水と昆布を入れて加熱する。
  2. 1が煮立つ寸前に昆布を引き上げる。
  3. 2に花かつおを入れ、煮立ってきたら1〜2分で火を止める
  4. 表面に浮いたアクを取り、花かつおが沈んだところで漉して完成。

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