午前10時。農家レストラン「ヒメコザクラ」の厨房からは早くもダシのいい香りが漂っていた。

店内には「いわて地産地消レストラン」の認定証が
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この日の当番は高橋さんを含め3人 |
下ごしらえを終えた材料、湯気をたてる鍋、調理台に用意された食器。その中をテキパキと立ち働く3人の女性の動きには無駄がない。「ずうっと一緒にやってるから、何も言わなくてもみんな何をしたらいいか、よくわかってるんですよ」。朗らかに笑いながら、でも作業の手を止めることなく教えてくれたのが高橋キミエさん。このレストランを運営する「大迫味の研究会」の代表である。

ヒメコザクラは体験工房「森のくに」内にある
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美しく盛り付けられたヒメコ膳とコザクラ膳 |
大迫町の生活改善グループで、30年以上に渡り伝統食を研究してきた高橋さん。「郷土の味を伝えていきたい」という思いから平成14年に研究会を立ち上げた。その時集まった6人で、平成15年4月にヒメコザクラをオープン。以来同じメンバーでレストランを切り盛りしている。「よし、やりましょうって(レストラン運営を)始めたんですけど、やってみたら案外大変だなぁと(笑い)。でもどうせなら人生色々やってみたいですからね」と話すその表情は生き生きと輝いている。

チームワークもばっちり
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たかきび団子揚ほか煮物やデザートもつく「ヒメコ膳」 |
アワやヒエ、そばなど大迫の伝統食は雑穀が中心である。そこに周囲の山林や自家の畑で採れた食材を取り入れて料理を作る。「春ならレストランに来る途中で摘んだフキやウルイを使ったりもしますよ」と高橋さん。和え物や煮物などのベースになるのは、厨房でじっくり仕込んだ鰹ダシ。化学調味料はいっさい使っていない。優しくすっきりしたその味わいは食べ飽きることがないと評判で、遠方から足を運ぶ常連も多いという。

「コザクラ膳」にはタラの芽など山菜の天ぷらがついていた
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この日の団体客は25人。3人で充分対応できるという |
人気メニューは、雑穀飯とそば団子が入ったまんじゅう汁、たかきび団子揚などがつく「ヒメコ膳」と、ダイコン入りの糧(かて)飯にモチモチのジャガイモ団子が入っただんご汁、さらに季節の天ぷらなどがつく「コザクラ膳」。見た目にも華やかな9つの小鉢に盛られたおかずは旬の素材を使うので、訪れる度に新しい味が楽しめる。ほかにも「やなぎはっと」や「ひっつみ定食」などの郷土食から雑穀カレーやおやつなど、メニューは充実している。

そば打ちは手早く。熟練の技が光る
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周りの自然を楽しみながらの食事は格別 |
「昔ながらの味だけではなく、今の人の口にも合うものを」と新メニューの開発にも意欲的で、厨房に集まるたびに味の情報交換をしているとか。メンバーの中には古代米や珍しい野菜を作っている人、そば打ちやひっつみ作りの達人もおり、高橋さんも「頼もしい仲間です」と誇らしげだ。

当番の3人で記念撮影。気心知れた仲間たち
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レストラン内では「森のパン屋 キャンベル」のパンも販売 |
料理の提供のほかに、そば打ちや雑穀を使ったたこ焼きなどの体験も受け入れており、「大迫の味をみなさんに楽しんでもらって、次の世代に繋げていければ」と話す高橋さん。まだまだやってみたい事がたくさんあるんですよと、とびきりの笑顔を見せてくれた。

レストランの前には高橋さんのお孫さんたちが植えた桜樹が
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営業日時は、毎週土曜・日曜と祝日の11時〜16時。4人以上なら平日でも予約が可能。
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