黄金色に輝く水田の向こうには、ゆったりと流れる北上川と前沢の町並み、そして奥羽の山並がパノラマのように広がる。

赤生津の集落の中に建つ「夢工房あごづ」
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地元の野菜や漬け物、手工芸品なども並ぶ
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「みんなが集まって話せるような場所が欲しかったんです」。
豊かで美しいその風景をガラス戸越しに望む産直「夢工房あごづ」で、加工製造部門「ドリームキッチンあごづ」の代表・小野寺多恵子さんが話す。販売スペースの脇に設けられた木のカウンターと丸太の椅子の喫茶コーナーは、そんな小野寺さんはじめ地区の人々の願いが形になった一角といえる。
束稲山のすそ野に広がる赤生津(あこうづ)に、農産物加工・販売を行う「夢工房あごづ」が誕生したのは平成17年4月。赤生津中央地域活性化組合の女性部が、花苗出荷後のハウスの有効活用のために始めた産直活動がベースになっている。「ドリームキッチンあごづ」は、この産直を運営する生産部会の家族の女性有志10人で結成されたグループである。

急速冷却器なども備わった総菜加工場
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ジャガイモと前沢牛の具。調味料の配合は企業秘密!
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バット1枚分の具材で180個程度のコロッケが出来る
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ひとつひとつ手で形を整える
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大人気商品「前沢牛コロッケ」は、地元産のジャガイモ「キタアカリ」と前沢牛を使った贅沢な一品。食感を残したジャガイモに荒めのミンチ状に加工した前沢牛を練り込み、調味料で味付けする。開発の指導にあたったのは、町内に住む料理家・伊藤勝康さん。プロ直伝の味を再現するために「開店前は地区公民館で夜まで作り方の特訓でした」と小野寺さん。メンバー総出で作ったコロッケ500個は、オープン初日にすべて売り切れたと笑う。
現在の製造ペースは1日400個ほどで、前沢牛コロッケほか野菜コロッケ、コーンクリームコロッケが定番商品。お客さんが訪れるたび、販売スペースの奥にある加工室でコロッケを揚げて販売する。冷凍した土産用コロッケもあるが、店頭で食べるアツアツのコロッケは格別の美味しさだ。

作る人によって形が違うのも手作りならでは
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高温で素早くカラリと揚げる
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油のこうばしい香りもたまらない
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揚げたてはソースを付けずに食べたい
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町内のイベントへの参加にはじまり施設を利用した自主イベント開催など、販売活動も着実に広がっている。去る9月18日には初めての「コロッケまつり」を開催し、おなじみの3種に加え地元産のサツマイモやキノコなどを使った全14種類のコロッケを販売、1000個を完売する盛況ぶりだったという。さらに高速道インターでの販売や地元の学校給食にもコロッケを提供。この10月からはホームページでのネットショッピングも始まった。「赤生津の素晴らしさを伝え、少しでも地域を活性化させたい」。小野寺さんらメンバーの、地域への思いが多彩な活動の原動力だ。

カウンターではコーヒーも提供。憩いの場所だ
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前沢牛のみそ漬けや前沢牛ハンバーグも人気商品
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平日でも客足が途絶えない「夢工房あごづ」は、地域の拠点そして出会いの場として多くの人々に愛されている。「美味しいからまた来ましたの声がうれしいですね」と小野寺さんは微笑んだ。

手を振ってお客さんの車を見送るメンバー
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左から、鈴木のり子さん、佐藤美代子さん、小野寺多恵子さん
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