きりせんしょやがんづき、黒豆が入った切り餅…。どれもこれも、岩手に住んでいる者にとっては親しみ深くて懐かしいふるさとのおやつばかりだ。

作食楽の会ほかにも様々な加工グループが利用している「いきいきハウス」
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左より、千田祐子さん、高橋君江さん、菊池エミさん、小原セツ子さん
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「みんな私たちが昔から食べてきたもの。それを好きに作ってるんだよ」。
朗らかに話すおやつの達人は、平成10年にJAきたかみ女性部の有志で結成された「作食楽(さくら)の会」の5人。20数名いる会員の中でも、とりわけ作ることが好きなメンバーである。加工場はJA和賀町支店の敷地内にある「いきいきハウス」。この日は農作業の合間を縫って集まった、代表の千田祐子さんはじめ4人の女性達が餅菓子作りにいそしんでいた。

豆銀糖の生地にはもち粉を使っている
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2種類のきな粉を使った豆銀糖はひねり方によって違う色合いになる
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「じゃあ、まずきりせんしょ作るとこ見せるね」と、千田さんがボウルの粉を手早く捏ねていく。その横では、あらかじめ寝かせておいた生地をきりせんしょの型に整える小原セツ子さん。向こうの作業台では、菊池エミさんが2種類のきな粉を混ぜて作った豆銀糖の生地をくるくるとねじりあげている。ふかふかのがんづきを手際良く切り分けているのは高橋君江さんだ。「誰が何を作るかはだいたい決まっているけど、作り方はみんな知っているから代わりに作ることもありますよ」と小原さん。ヨモギが手に入ったら使ってみるし、季節や気分に合わせて形を変えてみたりもする。こんな風だから、同じきりせんしょでも日によって違う。これぞ手作りならではの楽しさだ。

「ごまロール」作りは千田さんの担当
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たっぷりのゴマ風味。抹茶の緑も鮮やかだ
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きりせんしょはじっくり寝かせてから強火で20分蒸す。これでシコシコ感が生まれる
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桜や菊など季節によって型を使い分ける
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楽しさといえばもうひとつ、バリエーションの多彩さもある。前述の伝統菓子始め、現在作っているのは定番だけでも7種。餡入りの小麦団子にグラニュー糖と上南粉をまぶした「油まんじゅう」や、ゴマと抹茶のツートンカラーが楽しい「ごまロール」などオリジナルおやつもある。「人から教えてもらったり、視察先で見たものを応用したり。何回も作って失敗もしたね」と千田さん。添加物をいっさい使わない昔ながらの製法にこだわるがゆえ、いつも同じようには出来ないからという。生真面目に作られた餅菓子は、平成12年に開店したJAの産地直売所「フレッシュパークあぜみち」の人気商品になり、今では市内のショッピングセンターで販売されるまでになった。

雑誌にも紹介された「油まんじゅう」。一般的なあんドーナツより香ばしくて美味だ
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加工場では作り方の情報交換もする
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豆銀糖、油まんじゅう、ごまロール。大福には可愛らしいヘタがついている
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餡がサンドされたがんづきに、小振りのきりせんしょ、ふわふわの豆餅も評判だ
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「一度食べて忘れられない」「喜ばれたからまた買いにきた」など、商品のリピーターは多い。その一方で「作り方を知りたい」という問い合わせには、レシピを丁寧に教えあげるという。「うちは『作って、食べて、楽しみましょう』という会だから」と千田さん。テキパキと作業こなすメンバーだが、その合間には世間話に花を咲かせ、時折どっと笑い声も上がる。
何よりも作り手が楽しんでいる。それが「作食楽の会」のおやつが美味しい理由かもしれない。

いきいきハウスを利用する漬け物加工の「いずみっ娘」グループの商品
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同会の商品は北上市の流通センターにある「フレッシュパークあぜみち」で購入可能
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