胆沢の空に映える青屋根がシンボルの「いさわ産直センターあじさい」。建物の大きさに圧倒されつつ中に入ると、「いらっしゃいませ!」。お母さんたちが元気な声と笑顔で迎えてくれた。

あじさいロード沿いに立つ大きな青屋根が目印。手前が産直、右側が食堂
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産直のスペースは571平方メートルという広さ
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それにしても品揃えの豊富なこと。手前は総菜や菓子類のコーナー、奥にはコンテナに野菜や果物がずらり並ぶ。胆沢産「ひとめぼれ」が積まれた棚、壁際には鉢花や手工芸品まである。「常時200品目は並んでます。野菜も年間通して切れません」。組合長の高橋寿子さんも誇らしげだ。

食堂「あがえらんえ」は昼時となるといつも混雑。リピーターも多い
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家庭の味を生かした総菜類もこの充実ぶり
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胆沢は県内屈指の米どころ。米俵のディスプレイも楽しい
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切り花はもちろん鉢花も。鮮やかな黄色に春を感じる
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あじさいが誕生したのは平成11年。地区の基盤整備をきっかけに「産直をやりたい」と高橋さんら女性達の要望で施設建設が事業に盛り込まれたが、「まずはやってみなくちゃ」と40人の仲間で一足先に小さなプレハブを借りて農産物販売を始めたそうだ。しかも飲食店の営業許可も取っておにぎりやすいとんの提供を行い、翌年には要望の高かった菓子と豆腐加工の施設を増設。平成15年には農事組合法人化も成し遂げ、翌年2月に現在の施設が完成すると総菜の製造や食肉・乳類販売もスタート。手探りの状態からわずか5年で、産直・食堂・加工の3部門を持つ大型の産直施設を作り上げてしまった。

今日のサービス品はいちご。ひと箱山盛りで400円!
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春の限定商品のいちご大福。餅生地はふわふわ
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ずんだまんじゅう。旬の枝豆を冷凍保存して作るから香りも素晴らしい
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ヒット商品の「切り干しまんじゅう」。シャキシャキの歯ごたえが新鮮
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野菜類に加え、加工品が豊富なのもあじさいの特徴だ。毎朝搗きたての餅で作る大福、まんじゅうはあんこやずんだはじめ、切り干し大根や特産ピーマンを使った変わり種も。さらに胆沢産大豆を使用した豆腐や総菜各種、食堂「あがえらんえ」ではすいとんやもち定食が人気を博す。4月中旬には弁当製造の施設も加わる予定である。これほど多彩な展開を可能にしているのが、明確な運営方法。加工部門は独立採算制、野菜も組合員から出された年間栽培計画書を元に調整を行っている。だが高橋さんは「どんなに大きくなっても“スーパー”にはならない」と話す。

加工部門は約25人。「みんな食べることが大好きですね」と担当の黒沢定子さん
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当番は常時3人で午前・午後で交替。こんな笑顔で迎えてくれる
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思いの根底は、産直を初める前に研修で訪れた関東の産直で感じたギャップだ。「見たのは売り上げ1億、2億円の巨大な所ばかり。もっと身近な、生産者の顔が見える産直をやりたいと思いました」。それから8年、あじさいは視察先の巨大産直に匹敵する施設になっている。しかし生産者が交替で店に立ち、地場の食材にこだわる商品作りもいっさい変えていない。「自分達の商品に自信があるし、なにより仲間やお客さんと話すことが楽しいから」と高橋さん。季節のイベントや出張販売、地元スーパーでのインショップ、またブルーベリー栽培など事業は施設の外へも広がっており組合員も約70人に増えたが、運営の中心は今も女性たちだ。
「胆沢はお母さんたちがとっても元気。それがお父さんたちも、地域も元気にしているの」。
夢を描き、それを実現していくバイタリティ。女性たちのパワーが地域全体に波及している。
あじさいの営業時間は9時〜18時、定休日は1月1日〜3日。

産直結成の歴史を記録したノートには温かい一言が
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組合員の多くは専業農家。しかも全員が「車で10分圏内の人ばかり(高橋さん)」とか
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