花巻市野田の産直施設「母ちゃんハウスだぁすこ」で、「ちゃお米」というユニークな名前の米が販売されている。 ピンクのパッケージに刻印された絵はIBCテレビでお馴染みのキャラクター・ちゃおくんで、中身は鮮やかな紫色の古代米・紫黒稲。ひとつずつ紫の紐でていねいに結ばれた小さな商品には、「JAいわて花巻女性部 こだわり米グループ」の、農業に寄せる様々な思いが詰まっている。

パッケージの絵は、高橋さん手作り木版画の「ちゃお米」
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「母ちゃんハウスだぁすこ」内にある「ちゃお米」コーナー
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同グループは平成8年の「宮沢賢治百年祭」をきっかけに、「陸羽132号」と紫黒稲など古代米の栽培に取り組んできた。古代米はもちろん、賢治が栽培普及に尽力したといわれる陸羽132号も昭和以降、米の品質向上とともに田から消えていった品種である。「こういうお米があることを知らせたかった。絶やしてしまっては寂しいもの」と話すのは、グループ代表の高橋眞さん。「こだわり米」という名には「農にこだわる」ことで、農業のたいせつさを伝えたいとの願いが込められているが、「ちゃお米」はもとより、グループの活動にも遊び心とアイデアがあふれている。

3色の古代米をうまく利用して作る、ちゃおくん模様
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元絵から田の大きさに図柄を起こす。毎年違うちゃおくん模様に挑戦
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たとえば子供たちを招いて行う田植えでは、茎の色が3種類ある古代米の特徴を利用して田に模様を描いてしまう。そのモチーフがちゃおくんであり、模様が出る季節には観察会を開催。秋には収穫祭を行って特製のちゃおくん模様の巻寿司を作り、皆で美味しく味わい尽くす。出来た米は「ちゃお米」として販売するほか、刈り取った古代米の稲わらはリースや箸置きなどのクラフト作品にしっかりと利用する。「体験というよりふれあうのが楽しい。その中からたくさんのことをお互いに教わるんです」と話す高橋さん、実は花巻地区でもいち早くグリーンツーリズムを行ってきた。もちろん6人のメンバーも、さまざまな形で農業体験を受け入れているベテランばかりである。

紫黒米と様々な具材を使ってちゃおくん模様の巻寿司を作る
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図柄はメンバーが考案。紫黒米は酢を加えるとピンク色になる
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古代米の稲わらの箸置きは、お米を買った人へのプレゼント
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稲わらクラフトが得意な高橋さん。あっという間に完成した
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そんなメンバーだからこそ見えてくることがあるのだろう。昨年の収穫祭では大人たちによる稲刈り体験を開催したが、それは活動に参加しても田に入ってこない保護者の姿を見て「子供ばかりではなく大人にも食育が必要だと思ったから」という。そしてなにより「地元の人にもっと利用してもらい、地産地消への関心を深めていければ」と願っている。

近隣の子供たちと一緒に行っている田植え
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稲刈りもみんなで。作業の合間のおやつも子供たちには楽しみ
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盛岡市のJA純情ショップでも「紫黒稲」の名で販売している
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収穫祭では餅つきも行っている
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この日は忙しい農作業の合間を縫って集まり、だぁすこに出す「ちゃお米」の袋詰めなどを行ったメンバー。作業が一段落すると、テーブルを囲んで話に花が咲く。「みんな長いつきあいだから、集まると色々なアイデアが生まれてくるの」と高橋さんも楽しそう。食育もグリーンツーリズムも決して難しいものではなく、生産者自身が楽しんでしまうことが大事。こだわり米グループの活動は、そんなことを伝えてくれる。

だぁすこ裏手にある加工室で袋詰め作業
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手前左より、高橋 子さん、高橋眞さん、菅原満子さん。後ろ左より、古川博子さん、葛巻輝さん、藤根悦子さん、大木多鶴子さん
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